メディカルコーチングとは

医療・看護・介護の現場や病院マネジメントにとって、人の「やりがい」や「意欲」といった精神面へのアプローチが日増しに重要になってきています。

「コーチング」の方法論は、ビジネスやスポーツアスリートの目標達成を導くための手法として発展してきましたが、近年、医療分野でもメディカル・コーチングとしての事例が広がり、定着し始めています。

メディカル・コーチング

本来的な意味のメディカル・コーチングは、医師を中心とする医療提供者が患者に提供する対話メソッドを指します。

たとえば分かりやすい事例として、糖尿病などの生活習慣病や、機能障害からのリハビリテーションがあります。

これらの治療では、長期的にみると、薬などの対症療法よりも患者が生活をコントロールしようとする意思の方が経過に与える影響度は大きくなります。

メディカル・コーチングが意欲や自制心を引き出すことで患者の治癒力を高める役割を果たします。

また直接の目標達成にとどまらず、コアのスタッフがコーチング・スキルを身につけることで、チームワークが強化される側面も注目を集めています。

今日、多くの病院が看護師のチームマネジメントに困難な課題(離職率など)を抱えています。

高齢化などの要因により医療環境そのものを直接コントロールすることは難しく、より現実的なアプローチとしてスタッフ間のリレーションシップを改善することが重要になっています。

医療機関では、一般企業なら当然行われている水準のリーダー育成を積み残しているケースが多く見られます。

チームワークの基礎スキルとして、”質問によってやる気とやりがいをひきだす”コーチングの対話技法を習得することが有効です。

コーチングとティーチング

「コーチングによる目標達成」や日本語の”コーチ”という語感から、一方通行に目標をコミットさせるイメージを持つ方が多いのですが、そのようなトップダウンで「答えを与える」スタイルは”ティーチング”(teaching)であって、コーチングとは似て非なるものです。

コーチングの特徴的なポイントを簡潔にいえば「話を聞く」ことです。

話を聞く、というと「自分はできている。部下と話す機会を意識的に増やしている」というリーダーにも多く出会います。

ただ、具体的にその内容を聞いていくと単なる指示出しにとどまっているケースが多く、結論としてティーチングに偏ったチームマネジメントになりがちです。

コーチングでは、「あなたはどうしたいのですか?」といった問いを用いることで未来への意図を持たせ、やりがいを増やすことが重要なのです。

医療経営がコーチングを必要とする背景

メディカル・コーチングが注目されている背景として、日本の社会医療負担が全体的に上昇し続けていることが関連しています。

高齢化が進んでいくなかで、医療の需要に対して供給が追いつかなくなってきています。

たとえば、端的な事例としてリハビリテーションを必要とする入院患者に対して病床の制約があります。

より必要性の高い患者に入院サービスを供給するためには、リハビリをより早期に完了することがすべての関係者にとってプラスになります。

リハビリは患者が熱心に取りくむことが早期達成にとってもっとも重要であるため、その意欲を高めるスキルとしてメディカル・コーチングは理学療法士に高い知名度を持っています。

また高齢化に伴う”新しい現実”として、終末医療や緩和ケアのケースに触れる機会も増えてきています。

後期以降の高齢者の場合は、病気を直接治すことよりも、ある水準のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を保って、最期の人生を前向きに過ごすことがより重要なテーマとなっています。

このような現場に直面する看護・福祉スタッフが、時代に即した医療サービスのスキル習得のためにコーチング技法を学ぶケースも増えています。

看護師マネジメントの課題

経営環境以外にも、内部的な課題として看護師マネジメントの方法論をうまく持てていないケースがあります。

医療機関は一般企業と異なり、医師がチームを持たず各個人でサービス提供する独特の組織形態になっています。

多くの病院では、看護師だけが看護師長のもとに組織化されていますが、病院全体としてマネジメント慣行が定着していないため、実効性の高いチームワークを実現できているケースは多くありません。

その結果、看護師は離職率が非常に高い職種になっています。

離職率が高い職場では、採用・教育コストがかさむとともに、変動するスタッフ数で現場運営することによる疲労感も蔓延します。

看護師の視点から見るとどの病院でも常に求人はあるため、職場の人間関係をきっかけに離職するパターンが多く、また次の職場でも状況はそう変わらないため転々と職場を移る現状となっています。

医療安全を損なうようなケースも、振り返ってみると技術的・マニュアル整備面の不備ではなく、医療スタッフのコミュニケーション水準が著しく低く、基本的な声がけができていなかったようなパターンが意外に多いのです。

結論として、看護師チーム改善への処方箋は、リーダー育成がもっとも近道と言えます。

研修の実例から考えても、看護師はもともとの志が高いスタッフが多く、初心に立ち戻ることで意欲的に働くことのできる職種スタッフです。

このように、これからの医療課題はより人間的な側面が重要になり、メディカル・コーチングへの期待が高まっています。

「やりがい」や「意欲」といった各個人の意思に直接アプローチすることにより、医療の技術的な側面を大きく補完することが可能になります。

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